こんちくわ!Shygonです!
今回は実話をもとに黒人天才ピアニストを描いた
グリーンブック
について熱く語りたいと思います!
2018年に公開された本作は、実話をもとに人種差別が根強く残る南部を舞台にした2人の男の旅映画です。
天才黒人ピアニストとイタリア人用心棒の旅道中に起こる様々なハプニングを笑いあり涙ありのロードムービー。
第91回アカデミー賞では、作品賞・助演男優賞・脚本賞の3部門を制覇しました。
サクッとあらすじ
1960年代ニューヨーク。
幼い頃から英才教育を受けていたドンシャーリーは南部のツアーに同行するドライバーを探していた。
彼は黒人ながら天才的なピアニストとして認知されており、様々なお偉いさんに認められるほどの実力をもった人であった。
トニーリップはイタリア系の移民でレストランでボディガードをやっている中年小太り男。
愛する妻と子供を養うために、暴力とその食いしん坊で幸せな日々を過ごしていた。
面接の結果トニーはドンのドライバーとして南部を巡るツアーに同行することになった。
人種も違い、無教養なトニーは文章すらもまともに書くことができない。汚い言葉で陳腐なギャグを連発するも全く話ドンが合わないトニー。
そんな相反するふたりがロードトリップを通して絆を深め、お互いを理解し始める‥
男の友情を描くロードムービー
グリーンブックとは?
グリーンブックとは1900年代半ばに出版されていた黒人用の旅のしおりのことです。
黒人が旅行中に行ってはいけない場所や地域が記され、安全に旅行ができるように手助けするものです。
黒人が無作為に攻撃されることが多々あり、命の保証がされてなかった(特に南部)ので、彼らは自ら身を守る必要があったのです。
この旅のしおりを作成したビクター・ヒューゴ・グリーンの名前からこの名が付けられ、黒人を受け入れるレストランやモーテルが記載されていたそうです。
天才ピアニストドンシャーリーとは?
ドン・シャーリーは1900年代に活躍したジャズピアニストです。
1927年にジャマイカで生まれたシャーリーは、2歳からピアノをはじめ、弱冠18歳でボストンの大舞台で演奏するなど若くから才能に恵まれた天才ピアニストです。
ケネディ大統領の弟にも演奏経験があるなど、2013に86歳で亡くなるまで活躍したアメリカを代表するピアニストだったそうです。
そんな偉大な功績を残したドン・シャーリーが実際に行った南部へのツアーを、同行したイタリア系チンピラとの記録が本作では描かれました。
本作でドンシャーリーを演じたマハーシャラ・アリは見事アカデミー助演男優賞を受賞し、「ムーンライト」に続いて2度目の受賞になりました。
南部に根強く残る差別を描く
本作で描かれる2人がツアーで回るのは’’Deep South’’と言われるところです。
アメリカの南部地方はアメリカの中でもいまだに人種差別が残るくらい人種差別に敏感な地方としてとても有名です。
そのDeep Southは南部の中でも人種差別が強い地域のことを指します。いまでこそ時代が変わり、改善の方向に向かいつつありますが、1900年代半ばの状況は最悪です。
ちょうど南部出身のキング牧師が黒人の権利の向上を訴えている時期とも重なるように、住んでいるのがほとんど黒人なのに、少数の白人が全てを牛耳っていたのです。
僕は2018年夏にヒッチハイクでアメリカを横断したとき、南部にも行きましたが、黒人しかいませんでした。
それくらい黒人が住み着く地域なのにその大部分が迫害を受けていた、そんな地域です。
天才ピアニストがみる黒人の現実
本来いるべき立場が逆転しています。
本作は人種差別を扱った映画の中でも珍しい映画だと思います。
キャストほぼ黒人ではじめてアカデミー作品賞に描いた「ムーンライト」や、本作と同じ南部の人種差別を扱った「マッドバウンド 哀しき友情」に共通することがあります。
立場が弱く、他になにもない黒人を主人公にすることで、そこに存在する人種の問題や社会問題を映画を通して訴えるのが普通です。
でも本作では黒人なのに、大成功した天才ピアニスト、そして本来黒人の上の立場にいるはずのイタリア人が黒人のもとで働くという本来の立場が逆転しているのです。
それはニューヨークだったら通用することかもしれませんが、南部ではそんなのお構いなしですよ。
通常の数倍のギャラが支払われているのに、黒人というだけでトイレを使うときは、外の草むらの黒人用のトイレに行かされます。
黒人が車の後ろの席に座り、白人がドライバーという状況なだけで警察に呼び止められます。どんな天才なピアニストでも、お金持ちでも黒人というだけで南部では全く対応が違います。
話が全く噛み合わない天才とアホ
小さい頃から英才教育を受け、若いうちから大成功を収める天才ドン・シャーリーは8ヶ国語を操る秀才でもあったそうです。
本編でも英語、ドイツ語、ロシア語、イタリア語を話すシーンがありましたが、これまでの黒人が差別の中で必死に生きる映画とまるで違うことがよくわかりますね!
ShyGon的批評
本作をまとめると、人種差別が特にヒドかった南部の実情をシュールなジョークで笑える旅映画と言えるでしょう!
黒人か社会の中でもがき苦しみながらも必死に生きようとする勇気が出るような映画はこれまで散々作られてきました。
代表作を少しだけあげると上記で紹介した「マッドバウンド哀しき友情」や「ムーンライト」、そしてアカデミー作品賞にも輝いた「それでも夜は明ける」などがあります。
それらの映画に共通することは圧倒的立場の弱くて、差別されながらも強く生きる人たちが主人公なんです。
しかし、本作は同じ類の映画なのにも関わらず、黒人の天才ピアニストに毎日呑んだっくれのイタリア系移民。
歴史的背景から見ても教育をあえて受けさせてくれなかった黒人たちは無知で常に虐待の対象でした。
そんなパターン化した社会派映画の新たな道を本作は僕らに提示したのです。
びぇ!