汝、平和を欲するなら、戦いに備えよ。
キアヌ・リーブス主演の大人気アクション映画『ジョン・ウィック』の3作目の『ジョン・ウィック:パラベラム』。
オープニング3日間で前作を大幅に上回る62億8000万円を記録し、『アベンジャーズ:エンドゲーム』の4週連続トップの大記録を打ち破り、Rotten Tomatosでは批評家から88%の好成績を残した。
さぁチャプター3を見ていこう。
サクッとあらすじ
前作の壮絶な戦いの直後。新たな物語はここからはじまる。
まるで何者かに追われているような焦りを見せながら、あたりを見渡し逃げ回るジョン。
前作で「コンチネンタルホテル」の「ホテルで仕事(=殺害行為)をしてはいけない」という約束を破ってしまったジョンは、重罪人として追われていた。
5時10分。
14,000,000ドルの懸賞金が掛けられる6時まで1時間が切っていた。だが、その間に多くのヒットマンにその身を追われるジョン。
前作の戦いの末に傷を負いながらも、必死で次々と現れる殺し屋をかわしながら、ロシア系のマフィア組織を頼り、かつての旧友ソフィアのもとへ出向くのだったが…
キャストと製作陣
キャスト
- ジョン・ウィック
主演はキアヌ・リーブズ。シリーズ通して冷酷な殺し屋ジョン・ウィックを演じてきた。
伝説の殺し屋として恐れられるも、コンチネンタルホテルの規約を破ったため命を狙われることに。まさに四面楚歌の状態。
- ウィンストン
コンチネンタルホテルのオーナーとして絶対的な権力を持ち、ジョンに敬意を示す友人でもある。
シリーズ全作に重要な役として出演し、イングランド出身の名優イラン・マクシェーンが演じる。
- ソフィア
ジョンのかつての旧友であり、ジョンの逃亡を手助けする黒人美女。2匹の犬と彼女の息の合ったコンビアクションが見どころ。
50歳を超えた女性とは思えない美ボディーをinstagramにポストするハル・ベリーがセクシーなアクションを披露する。
X-MENシリーズのストームや『007ダイ・アナザー・デイ』で ボンドガールを演じた。
他にも『マトリックス』でキアヌ・リーブズと共演したモーフィアス役のローレンス・フィッシュバーンや、日本人の敵役ゼロをマーク・ダカスコスが演じた。
製作陣
シリーズ通して監督を務めるのが、チャド・スタエルスキ監督。
スタエルスキは元々アクションのスタントマンをしていた人で、『マトリックス』でキアヌ・リーブズとアクションをしていた人物。

スタエルスキと『ジョン・ウィック』で共同監督を務めたデビッド・リーチ監督が共同で製作会社87Eleven Productionsを設立し、『ジョン・ウィック』はキアヌと彼らによって製作された。
感想
シリーズ3作目もあり、設定の説明が一切いらないから本編の2時間11分の全てをアクションシーンに費やせる。
冒頭から傷だらけになりながらも、敵をなり倒していくジョンの勇姿とリアルを追求したガンフー。

89点/100点
実践的なリアルを追求したアクションと文化の集合体のような湾曲した世界観。タイトルのパラベラムが意味する作品の方向性が研ぎ澄まされている。
『ジョン・ウィック』が全米で封切られると、『マトリックス』以降ヒット作に恵まれなかったキアヌが復活したぞ!と口コミで広がり、キアヌのキャリアを代表する作品になった。
さらに続編であるチャプター2が公開されると、わずか2週間足らずで前作の興行収入を超えるという前代未聞の大記録を打ち立て、大ヒットを飛ばす。
そして今作はあの『アベンジャーズ:エンドゲーム』の4週連続一位を食い止め、全米一位に躍り出た本作。
話題性&批評的にも大絶賛が寄せられ、誰も今ジョンの快進撃を止められない。
本作チャプター3は、これまでの2作品がまるで前兆だったのではないか?と言わしめるほど、本作に全ての熱意とジョンの人生を投影し、やっとジョン・ウィックの映画が見れた!そんな感じだ。
漆黒なスーツに真っ赤に染まるワイシャツを身につけながら、逃げ回る冒頭シーン。
本編スタートと同時に2メートル超えの巨人と図書館で本を使ったアクションを披露し、ケガを負いながらも必死に戦うジョンの姿、カッコイイじゃないかよ….
本作でのアクションはさすが元スタントマンが魂込めて製作した意欲作だけあり、アクションのレパートリーが豊富で、いたるところに「おぉ!」思わせるトリックやカラクリが散りばめられていた。
冒頭の本を武器にしたアクションからはじまり、馬に乗ってニューヨークの街中を駆け巡る現代の西部劇感に、大勢のバイクに襲われながら魅せるバイクアクションなど、どんだけファンを喜ばせてくれるんねん!と関西弁が思わず出てしまうほどの興奮(関西なんて住んだことないのに調子乗ってすみません…)を覚える。
ただひとつだけ違和感があった。
その不満を先に言ってから、タイトルに隠されたパラベラムの意味とジョンの関連性を説こう。
日本人役のマーク・ダカスコスについて
本作でジョンの最大の敵はニューヨークの片隅で寿司屋を切り盛りするゼロという日本人の武道家なのだ。
丸坊主にパッチリ目のゼロはジョンに憧れる武道家であるとともに、ルール違反をしたジョンを撃つために、ジョンの前に立ちはだかる最強の敵である。
彼のオフィスには多数の武士の鎧を展示されており、その中には見覚えがある有名武士の鎧がチラッと見える。
ただゼロの日本語が壊滅的に下手なのは、日本人がツッコまないワケにはいかない。
日本人が何を言っているか聞き取れない時点でもう日本人役は成立しないし、あまりいい気分にはならない。
日本の独特な文化を取り入れようとするハリウッド映画はここ数年急増したが、それは日本文化とは言わないぞ?とツッコミたくなる作品ばかりだが、本作はそんなに違和感はなかった。
ただ日本人の役で日本語を話すシーンがあるなら、そこはしっかり抑えてほしいポイントだし、そこを徹底しないだけで、作品の世界観は総崩れになってしまう。
本作では、日本文化に限らず、現代のNYを舞台に馬を走らせてみたり、ゼロが初登場するシーンでにんじゃりばんばんを流したり、日本人が興奮するトリックが仕組まれているのはとても嬉しい。
ただ顔がアジア人というだけで選ばれたマーク・ダカスコスには失望する。真田広之が日本人役にキャスティングされていたのですが、結局ダラスコスが演じることになりました。
彼は母親が日本人のハーフであり、ルーツに日本の血が入っていることと、武道家として活躍しているから、本作の敵に抜擢されたらしいが、ちょっと残念だった。
アメリカに住んでいる筆者は、アジア人の違いはわからないのに、日本の文化を好む現地の人たちの感覚には納得していないので、本作の日本人の捉え方には少し不満が残るのです。
はい、ここまでが日本にうるさいおじさんからの不満でした。
パラベラムが意味することとは?
パラベラム(=Para Bellum)は、ラテン語で「戦争の用意をせよ」という意味です。
“Para Bellum”は”Si vis, Para Bellum”の「汝、戦争を欲するなら、戦い(戦争)に備えよ」という古代ローマの軍事学者レナトゥスの軍事論の引用であり、有名な語源とジョンが向き合う戦争(戦い)を意味することになります。
さらに本作では、ジョンがソフィア協力のもと砂漠の果てに暮らす主席連合のところへ行くシーンもギリシャ神話の話と繋がっています。
キリストの言行が描かれた『ルカに夜福音書』の中に登場するイエス・キリストが荒野でサタンの誘惑を受けた話が元ネタになっているそうです。
ジョンが亡き妻やオーナーのウィンストンへの裏切りをほのめかすシーンで、結婚指輪をはめた薬指を日本のヤクザのように切り落とすシーンはジョンがサタンに魂を売る様子を描いたのです。
コンチネンタルホテルでのアクションシーンのときヴィヴァルディの名曲四季から冬が流れ始めるのも、伏線になってきます。
春夏秋冬で4つの協奏曲に分かれるこのシリーズでは4つ目の最後に当たる冬を大事な見所シーンで流すには何かしらの思惑が取れます。
冬(L'inverno)の中、寒さに凍えた主人公(=ジョン)が、最後の戦いに備え、決死の覚悟で襲ってくる敵を撃ち殺していくのです。
そんなジョンの姿を原曲の”Winter”に重音を重ねたバックミュージックが最高でしたよ。
びぇ!