こんちくわ!Shygonです!
今回は他に類を見ないイラン映画
人生タクシー
について熱く語りたいと思います!
2015年に製作された本作は、イランの街中で監督自身がタクシードライバーに扮して、イラン国民の一般的な日常をドキュメンタリータッチで描いた作品です。
イラン出身のジャファール・パナヒはその反政府的な描写から、イラン政府から監禁され、映画を20年間作れない。
そんな中その監視の目をかいくぐって、製作されたのが本作。
多くの芸術家がイランから出国する中、唯一国に残り、制裁を受けながらも映画を撮り続けています。
ジャファール・パナヒのルーツを探る
映画監督が自ら運転して、タクシードライバーに成りきる。俳優でもそんな演技をさせられる映画は少ない。
パナヒ監督は度々なるイラン政府への批判を映画で表現したため、自宅軟禁され、2010年から20年間映画製作を禁止されている。
というとてつもない背景が本作にはある。
2000年に公開された「チャドルと生きる」では、イランの凄まじい環境中、生きる女性の奮闘を描きました。
本作はイラン政府を痛烈に批判しているとして、自宅軟禁の処置が取られました。でも簡単にそんなのに屈しないのがパナヒ監督の底力です。
2014年に製作された「これは映画ではない。(this is not a film)」では、外出が許されない自宅で、自身の生活の一部をドキュメンタリータッチで描き、検閲の目をかいくぐり、カンヌ映画祭で発表されました。
これまでも女性がサッカーを見ることが出来ないイランを描いた2006年製作の映画「オフサイドガールズ」など、前代未聞の作品がずらり。
そして、2015年本作が発表されました。
本作には、イランで有名の人権弁護士Nasrin Sotoudeh(彼女も自宅軟禁されたり、パナヒ監督と同じ遭遇を受ける)がゲスト出演したり、実際の姪が出てくるなどリアリティーが追求されました。
ジャファール・パナヒ監督のキャリアはイランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督のもとで助監督からはじめました。
イラン映画の父とまで評されるキアロスタミ監督の作風に影響されたような描写があらゆるところでみれるのも特徴です。
キアロスタミ監督がパルムドールを受賞した1997年製作の「桜桃の味」の構成みたく、車でテヘランをグルグル運転するのは本作と共通する箇所ですね。
イランの日常を描いたキアロスタミ監督にかわり、パナヒ監督はイランのダークな部分を描くのがひとつの特徴です。ペルシャ語で"Siáhnamá’í "と呼ばれます。
本作は、ベルリン映画祭で最高賞にあたる金熊賞に輝きましたが、パナヒ監督が自宅軟禁なため現地に行けなかったため、甥Hana haeidiさんが賞を受け取りました。
車載カメラからイランを覗く
映画を公の場で撮ることが許されていないパナヒ監督が編み出した今回の企画は車載カメラです。首都テヘラン市内をタクシードライバーに扮して、イラン国民の日常を描きました。
普通の映画のように作り込まれたストーリー性に、考えられたカメラワークなど一切通用しません。
ただ行き渡りばったりのドキュメンタリーぽく本作はザツに撮影されています。画質もよくないし、画角もブレていて正直見ていて心地よくない。
だか、飲み込まれるようにこの映画を観てしまう。それはパナヒ監督が政府からイジメられているという特質な状況下であることと、世界的に評価されてきた監督だからこそなせる技なのです。
そんなパナヒ監督の目に映るイランの実情を本作が描く。アメリカと続く対立など世界から見ても閉鎖的な国であるイランの内情は正直僕らからはわかりません。そんな状況の中、イランで長く住む監督だからこそ描ける、伝えられることがあるのです。
そんな日常の一部を本作を通して垣間見ることができます。
客が車載カメラを見て言う。
これなに?ねぇ?なによ?
防犯装置?
パナヒ監督が答える。
まぁそんなところだよ!
それに男が応答する。
かっこいいじゃん!
映画では見られないザ日常会話の一部始終。
次に夫婦での口論。
ある男が突然口を開く。
国は見せしめのために
泥棒を2.3人死刑にすればよい!
それに対して
怒った女性は言い返す。
貧しい人が食べ物に飢えてやったのだ!
と、男の歪んだ理論に真っ向から反論。
一見夫婦間の喧嘩に思えるけど、実情場夫婦ではなかった。イランのタクシーでは乗り合いが普通で、同じ方向に行くなら一緒に乗っけていくのが普通なのだそう。
そんな夫婦間のしょうもない口喧嘩からもイランの内情が浮かび上がってくるのです。それは死刑数が中国に続いて多いということ。犯罪を犯したら、はい!あなた死刑ね!と普通に人が法のもと殺されてしまう。
パナヒ作品のオマージュ
本作を観ていると一般市民が映画にバンバン登場してくる。
なので、わかる人には、あ!パナヒ監督だ!またなにか映画撮ってるんですか?と質問したりする会話が多々出てくる。
パナヒ作品を愛する人たちからはそんな彼の過去作品の話で盛り上がったりもする。
例えば、ひとりの客が立ち去るとき、
「クリムゾンゴールド」のカフェのシーンに似ているね!と発言して出て行ったり。
実際の姪がパナヒ監督の運転するタクシーに出てくる。
「鏡」の主人公みたくひとりで帰るよ!
とダダをこねる。
幼いくせして大人顔負けのウザさ、イランの女性も強そうですよね。でも、姪との会話が結構面白くてさ
幼いガキの少女がいっちょまえに、
賢くて教養のあるレディーはカフェかなんかでアイスかコーヒーを頼んでから会話を楽しむのよ。とおじさんに一喝しちゃう。
どの口が言ってるんだ、ボケ!と思わずニヤリと。
そんな新感覚な映画が人生タクシー。
びぇ!