こんちくわ!Shygonです!
今回はイランの出身の注目の監督の初作品
白い風船
について熱く語りたいと思います!
1985年に製作された本作は、7歳の少女が大きくて可愛い金魚を買うために、イランの小さな街を奔走するお話。
イランの巨匠アッバス・キアロスタミが脚本を務め、弟子として知られるジャファール・パナヒが監督を務めた初監督作品。
ママ、金魚が欲しいの!
7歳の女の子が金魚をおねだりする。彼女の手にある青い風船が風に揺られる。お母さんに黙りない!と怒られ、涙を流してしまう。そんなどの家庭でも起こりゆる光景からはじまるだんまりとした映画です。
"泳ぐのがダンスしてるみたいなの!"
"太っててとても可愛い!買ってよ!"
"ねぇ~ママ~!!!"
これから新年を迎えようとするイラン国内では、大人たちは大忙し。年の変わり目はどのお母さんも忙しいのだ。
買い物に、洗濯、子供の世話。ひとりの少女の願いなど聞いてもくれない。新年を前に大忙しなんだから、ダダをこねないで、と言いたいようだ。
せっせと働く大人たちとのどかに金魚を見つめる少女は同じ地にいるとは感じられないほど、両者が生きる世界は違って見える。
脚本を執筆したキアロスタミ監督が有名俳優を使わず、素人にこだわるように、監督を務めたパナヒ監督も同様の手法にこだわる。
キアロスタミ作品同様に、素人とは思えない演技力やよりリアリティーを感じさせるようにイランの日常を描く。
パナヒとキアロスタミ初タッグ
イランを飛び越し、世界を代表する巨匠アッバス・キアロスタミ監督が脚本を務め、彼のもとで助監督をしていたジャファール・パナヒ監督の初監督作品。
はじめにアッバス・キアロスタミとジャファール・パナヒとは誰なのか。両者ともヨーロッパの映画祭で評価されるイラン出身の監督である。
日本の巨匠小津安二郎監督の影響をもろに受けたと語るキアロスタミ監督の作風とパナヒ監督の作風は似たものを感じる。
ただ男の子の純粋な気持ちから、青年の思う恋心など、主に男性目線で描いてきた師匠キアロスタミ監督とは、うってかわり、女の子目線でイランを見つめる弟子パナヒ監督。
どちらも幼い子供たちがめまぐるしく生きる大人社会に適用しようと奮闘する。そんな可愛らしさの反面、イランの実情を間接的に描こうとした。
必死の交渉の末、金魚を買うお金をもらった少女ラジエー。可愛い金魚を飼うため、お小遣いを握りしめて市場に向かう。
途中、変な詐欺師にお金を取られ、返してくれない。その男は蛇使いで、大道寺のように上手い口車に乗せられてしまう。
7歳の女の子が勇気を振り絞って、もらったわずかなお金を募金させようとする立派な男たち。彼女にとっては、なんて厳しい世の中だろうと、感じてしまう。
師匠のアッバス・キアロスタミ監督の出世作として知られる「友達のうちはどこ?」で6歳の男の子が友達の宿題を間違って持って帰ってきてしまい、それを友達の家に届けるお話に、本作はとでもよく似ている。
7歳の女の子が大きくて綺麗な金魚を買うために、市内を駆け巡る。幼い男女がはじめて、大きな一歩を踏み出し、大人の世界というものを味わう。
本編で、よく出てきたひとりのおじさんはチャリを漕ぎながら
"海は荒れている 兄弟よ"
と何回も連呼し、そんなシーンが多々出てくる。海は荒れているぞ!と兄弟たちに投げかけるように、7歳の少女の荒波に向かって、はじめてみる社会へひとりで飛び込む。
映画自体は淡々と少女が街を駆け巡るお話だが、本作は国外で高く評価された。デビュー作としては、珍しいカンヌ国際映画祭でカメラドールを受賞し、BFIが選ぶ14歳までに観るべき映画ベスト50に選出された。
これはキアロスタミ監督の処女作「友達のうちはどこ?」も選ばれている。つまりキアロスタミ監督とパナヒ監督は師弟関係ながら、全く同じスタートを切った。ここから両者の作風は違った方向へと変化してゆく。
本作で戦列なデビューを飾ったパナヒ監督は、のちにイラン政府から自宅軟禁にされたり、映画製作を禁止されたり、世界的に映画に対するその熱い気持ちが評価される。
びぇ!